嫌いだ

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バレンタインなんてもの誰が作ったんか。 ほんまに、いらんもの作りやがって。 不貞腐れて窓の外を眺めると陸上部のエース鈴木くんが華麗に棒高跳びを決めたところやった。 …おもろない。 鈴木くんはモテる。 陸上部のエースやし、顔もかっこいい。 バレンタインも山ほどチョコ貰うんやろうなぁ。 チョコも貰わず家に帰って母さんに笑われたことなんてないんやろう。羨ましい一言に尽きる。 「長野、何見てんの?」 「ん?…別に何も見てないけど」 「嘘つけ。お前また鈴木のこと見て悲願てたんやろ。やめや、余計にチョコが遠ざかんで」 クラスメイトの道端がポン、と肩を叩く。 余計なお世話や。 「道端かて去年女子からもらってなかったやんか」 「俺、甘いもの好きちゃうし」 甘いもの好きじゃないなんて初耳や。 昼休みにチョコドーナツと苺ミルク飲んでたのはどこの誰やねん。 2月やというのに、僕たちには浮ついた話のひとつもない。 放課後だって、テニス部の練習がなくなったからと言って勉強をする訳でもなく、デートする彼女がいる訳でもない。 あーあ、高校のうちにチョコレート1回くらいは貰いたいなぁ。 大きなため息がこぼれた。
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