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パリパリと高い音をたてて踏みつけたところから足跡が追いかけてくる。溶けきれなくて冷えた雪は氷になってふわふわしていない。シャリっ、ザクザク、ワクワクしない音を聞きながら足を進めた。今朝みていた朝のニュースで歩幅を狭くして歩くと転ばないという情報は間違ってはいなかったようで、スケートみたいにはならなかったがいつもより足元は冷えた。
交通機関の遅れで遅刻する人がちらほらいる中、始業すると同時に鳴り響く電話機のコール音。
ザワザワしていたのが一気に静かになり誰もが目線を私へと注ぐ。息を吸って吐いて、いつもの声をひきだす。毎日同じことの繰り返し。
最初の言葉は、
「いつもありがとうございます。」
二言目はだいたい
「大変申し訳ございません。」
始まってすぐの電話と終わる間際の電話はだいたいがクレームだと私の会社では言われている。ひとつ上の先輩が寿退社をしてから始業すぐと終業間際の電話は私の担当になった。(御局様はとってくださらないし、後輩は1度とらせたら社長までもを巻き込みそうになるくらいのクレームに悪化させた。それ以来取らせないようにしている)
電話を切ってすぐに向かいの斜めから声がかかる。同期の営業担当の玉岡(たまおか)君。親しい人からはたまちゃんと呼ばれているそうだ。
「ばーや、いつもサンキュな」
「仕事ですからね」
「ばーや、冷たいよ~。雪降ってるんだしもう少し温かくいこうぜ!」
「玉岡君。昨日やってた資料だけど主任がやっぱり変えてくれっていってたわよ」
ウソだろ~という嘆きを聞き流してスリープモードを解除した。
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