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「ばーや、何ヶ国喋れんだよ」
「喋れるのは英語と日本語だけ。訳せるのが中国語とロシア語と少しだけフランス語かな?」
「少しだけフランス語とは?」
「大学時代の専攻で取ったけど教授と全然合わなくて途中で離脱」
突然会話に参加してきた宮木は南さん担当のアシスタントでたまたま後ろを通った時に聞こえてきた会話に興味を持ったらしい。全く、仕事が速い人は自分の時間に余裕があって羨ましい限り。
「ばーやさんがなぜアシスタントで止まってるのかが不思議でならんです。むしろ大企業でもいけただろうに何故なんですか?」
南さん宛に送る訳を打ち込む手を止めることなく宮木の質問に大企業なんて嫌だな自由がなきゃ楽しくないだろ。って昔ある人に助言されたからと答えればとりあえずは納得したようで、俺もロシア語習おうかなと呟きながらコピー機の方へ歩いていった。
よし。と心の中で呟き、南さん宛に送り返して顔をあげたと同時に主任と視線が交じり無言の圧力により私は腰をあげた。
「30分後に戻ってこれるよな?お前にやって欲しい案件がある。」
PCから目線を逸らさずにそれも私にだけ聞き取れる音量で伝えてくる玉岡君は本当に優秀だ。
「無理20分が限界。いつものとこ来て。」
言い終わると同時にPCをスリープモードに変更して誰にも聞かれないように小さく息を吐いた。
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