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「私、玉岡君のこと分からないよ。なんで私なんかを営業アシスタントでつけてるの?可愛い子のがいいと思わないの?」
するりと出てきた私の疑問に玉岡君は今まで見たことないくらい頬が緩んだ顔をみせて私にほほ笑みかけていた。その笑顔にデジャブを感じながらも彼の言葉に耳をかたむけた。
「主任から聞いたでしょ?俺がばーやを手放さないんだって。その理由は2つ」
少しだけかぶってしまっていた雪を玉岡君が払いのけてくれたかと思うと次の瞬間には軒下の壁に押さえつけられていた。
「1つ目は、ばーやが仕事できるから。2つ目は、ずっと好きだから」
私を押さえつけてる力は弱くはならないが、玉岡君の冷えきった右手は私の左頬を優しく撫でた。冷たさに驚かなかったのは自分の身体が思っていたより熱を持っていたからで、その冷たさがむしろ心地よく感じていた。
「ずっと好きって、それは恋愛感情での好きなの?」
「恋愛感情での好きだよ。ばーやはだいぶ酔っ払っていたから覚えてないかもしれないけど、今から4年前の雪の降る夜に俺たち出会ってるんだ」
4年前と呟いてから思わずあっと声をあげると玉岡君と視線が交わった。黒い瞳に、前髪のくせっ毛、女の私でさえ嫉妬してしまうような長いまつげにぱっちり二重。あの時と違うのは髪の毛の色だけだ。むしろなぜ今まで気づかなかったのか自分を殴りたい気持ちを抑えて言葉を選んだ。
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