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「…………ごめんなさい。もう、大丈夫、です…っ」 一頻(ひとしき)り泣いて、やっと出た声はみっともなく掠れた鼻声で、おまけにしゃくり上げてしまった。 恥ずかしさに俯いた瞬間。今度は腹の虫が主張して、かっと火を噴くように顔が熱くなる。 「そう云えば仕事終わった後だし、お腹空いたよね。簡単なもので良ければ今朝食用意するから」 くすりと笑ってそう云った彼に居た堪れなくなって、俯いたままその袖を掴んだ。 「あのっ、迷惑で無ければ、俺作りますっ」 「え、でも……疲れてるでしょう?」 「いえ!作らせて下さいっ。迷惑掛けたお詫びと、助けて貰ったお礼に…っ」 「だけど…」 「お願いしますっ」 多分この時の俺は、かなりテンパってたんだと思う。 良く良く考えれば初めて来た家の台所を使うなんて、随分失礼な話だと思う。 だけど彼はふっと微笑んで、「じゃあお願いしようかな」と云ってくれた。 許可を得て冷蔵庫を開けると、普段から自炊してるのだろう、一通りの食材が揃っていた。 朝から重たいものもアレだよな、と考えて手早く材料を見繕い調理器具を準備する。 時間を掛けずに作った物は、ポテトサラダとクズ野菜を刻んで入れたトマトのスープにベーコンエッグ。 それらをテーブルに並べながらチーズを乗せたトーストを備え付けのオーブンに入れた。 その間に山科さんは新しいコーヒーを準備してくれていて、焼き上がったトーストを運んでダイニングのテーブルに着いた。 「わ、美味しそう。頂いていいのかな」 「どうぞ。って山科さんの家だし材料なんですけど」 苦笑する俺に、「いただきます」と両手を合わせて彼は先ずスープを一口飲んだ。 「うん、美味しい」 無邪気に破顔する彼に、何だか照れ臭くなってトーストに齧り付いた。 一つ一つゆっくり味わうように咀嚼しては飲み込む度に満足そうに表情を緩める彼に、自然と俺の頬も緩んだ。
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