おしまい

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「じゃあ、私……」  もう帰るね。と言おうとすれば、玉彦は私に最後まで言わせまいと言葉を被せた。 「待っている」 「え?」 「だから待っている。お前が自分で自分の人生に責任を持って決断できる時まで。今はまだその時ではないだろう。俺もあれから考えていた、比和子のことを」 「うん……」 「俺はこの先もこの地に縛られる。これは避けられようのない物事だ。だから多くは望まない。望めない」 「うん……」 「これからまだまだ想像も出来ない問題も出てくるだろう。それでも共に在るというのならその時は一緒に居ればよい。だがもし他に……」 「他なんて有り得ないから!」 「だが……」 「有り得ないから! 私、玉彦以外の人とどうにかなるだなんて、絶対ないから!」 「後悔はないのか?」 「後悔なんて後からわかることだもん! 今から後悔なんてできないじゃん」 「言われればそうだが……」 「でも、待ってて、玉彦。私、きちんと玉彦に相応しくなるように努力して、玉彦が私を選んでくれたことを後悔しないように頑張って大人になるから」 「期待している」 「だからもう二度と会わないとか言わないで。きちんと喧嘩してでも話していこうよ」 「わかったよ。前言撤回する」  わかったよ? 玉彦の言葉遣いに耳を疑えば、前のめりに私に倒れ込んだ。  支えるために掴んだ玉彦の二の腕は、着物の上からでも判るほど熱を持っていた。
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