金欠青年、野望を語る

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「それなら、バイトすればいいじゃん」  すました顔でそう答えたのは、小宮 清士郎(こみや せいしろう)。整った顔立ちと、目の下の泣きぼくろが特徴的な好青年だ。彼は、痩せて骨と皮ばかりの長い手足を意味もなく振り回す親友を眺めながら、呆れ顔でつぶやく。 「ガメツも普通にバイトすればさ、こんなぼろっちいとこに住まなくていいのに」 「うるせぇ、清士郎。俺は意味もなく偉そうな態度をとってくるバイトリーダーだとか、クレーム同然の文句をたれてくるオキャクサマとかいう連中に頭を下げたくないんだよ!」 「偉そうな態度をとっているのも、クレーム同然の文句をたれているのも、君のほうじゃないか……」  ため息をつく清士郎を尻目に、ガメツは部屋の窓を開ける。年季の入った窓枠は軽く変形しており、ガタガタという音が鳴ったあとにようやく外の景色が現れた。夏の蒸し暑い風に顔をしかめながらも、金欠青年は心の中で思い描いていた己の野望を語りはじめる。
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