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「なあ、清士郎。ここから見えるのは田んぼと、畑と、さびれた民家だけだ。だがな、俺はいつか都心の高層マンションの最上階に住み、眼下であくせく働くオッサンどもを見ながら、一日中遊び惚けるのだ。そのために、俺は大金持ちになる。そうなりゃ、このボロアパートともおさらばよ」
その目に宿る輝きは、彼の貧相な風貌に似つかわしくないほどに強かった。そんな親友の様子を見て、清士郎はそれ以上何を言うでもなく……
テレビの電源を入れた。
『本日未明、アメリカのウェストバージニア州で起きた傷害事件についてーー』
「ちょっと待て!」
鼻息を荒げ、ガメツは窓の外から級友のほうへと向き直る。
「俺の話を聞け!あと、我が家最大の高級品を無断で使うな!電気代だって馬鹿にならないんだぞ」
「君が発想まで貧相だったもんでね。ちゃんと話は聞いてるよ」
「とか言いつつチャンネルを変えるなぁ!番組探しに夢中じゃねーか!」
などと言い合っているうちに、ふと、清士郎の動きが止まった。つられて、ガメツも画面に目を向ける。
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