金欠青年、噛まれる

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金欠青年、噛まれる

 木漏れ日をうけて、ガメツの額の汗が光る。彼は後ろに続く清士郎と舞のほうを振り返りながら、呆れ顔で言葉を投げかけた。 「おい、遅いぞ。誰かが先にツチノコを見つけたらどうする」 「ちょっと待ってくれよ、山菜取りで山道に慣れてる君とは違って、僕らは運動が苦手なんだからさ……」  息を切らしながら、清士郎が反論する。だが、その声にはいつものような張りがなく、呼吸を整えるので手いっぱいのようだ。 「だがな清士郎、そこの妄想ヤロウは文句ひとつ言わずに道案内をしてくれてるぞ」 「そ、それは……」 「ふひひ……イチャイチャ……ツチノコ……つかまえたら……すきなだけ……。あ、ガメツくん、そこ右。……あんなこと……こんなこと……ふひひ……」 そこには、半ば虚ろな目で繰り返し呟く舞の姿があった。こちらも清士郎と同じく息が切れ、体力は彼以上に消耗しているはずだったが、確たる足取りで地面の草を踏み分け、進んでいる。 「利害が一致していなければ、できるだけ関わりたくない人種だな」 「君がそれを言うか」
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