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二人同意の上で、俺はローンを組み、この新築分譲マンションを購入したし、美香のお腹には俺の子がいる。
だから、もう結婚することはお互いわかり切っていた。
でも、形式的なプロポーズだけはしてなかったので、恋愛ドラマよろしく、昨夜、三ツ星レストランで食事して、美香に指輪を見せてプロポーズしたのだ。
にっこり笑って頷いてなかったっけ?
それに…。
『それって、洗面所で返事するようなことかよ』
『そうね。ごめんなさい。
じゃあ、あっちで話すわ』
美香が柔軟剤を棚に戻し、リビングへと歩いて行く。
その後ろ姿に気を取られていると、背後で洗濯機が “ウ゛ィン…” と動き始めた。
びっくりして振り返ると、洗剤の投入口が開いたままになっている。
『あれ? これ、洗剤、投入した? 』
確かに独り言のボリュームではなかったかもしれない。
リビングにいる美香に届く声の大きさだったと思う。
美香はリビングから洗面所の前に再び姿を表すと、
『うるさいっ! 』
と一言だけ言って、玄関のドアをあけ、出て行ってしまった。
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