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◇
「面白い雰囲気だね」
チャキチャキことを進める曽田さんに引っ張られるように連れてこられたのはアメ横の飲み屋だった。
入った店だけじゃなく、周囲の店もみんな半分屋外のような、テントのような空間。
「曽田さん、こういう店、よく来るの? って安っ! 」
メニューを見て驚いた。飲み物も食べ物もどれもワンコイン(500円)で済む価格設定。
「いいでしょう?
しかもボリュームがあって、美味しいんですよ。
とりあえず生でいいですよね。
歩いたから喉乾いちゃった。
すいませーん! 生二つ! 」
曽田さんが店員に向かってブイサインをしている。
生ビールの数を遠目から伝える若干オヤジっぽい行動も、既に可愛くしか見えない。
「今日は週末だから小早瀬さんみたいに観光客っぽい人もいますけど、平日は日の高いうちからカオスなんですよ」
「昼間から飲んでるってこと? 曽田さんも? 」
「いやいや私は昼間働いてますから。
仕事終わって通り掛かると、既に出来上がった人たちが多いんです」
生ビールが運ばれてくる。
「小早瀬さん、じゃあ、乾杯! 」
「う、うん、乾杯」
“曽田さんとの出会いに”
能天気な俺は心の中でそんな言葉を続けた。
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