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豪雨の日
遡ること、およそ一月前の週刊夕日の小会議室。
バケツをひっくり返したようなどしゃ降りのある日、
記者の佐島の正面に、小早瀬明広が向かい合うかたちで座っていた。
佐島が出したコーヒーを、明広はぼんやりした顔で飲んでいる。
「今回はご協力ありがとうございます。
それもこんな雨の中、ご足労いただきまして」
「ぇ? あぁ。
ほんと、どしゃ降りですね」
カップをテーブルに戻した明広が窓の外に目を向けたので、佐島もつられて見る。
[電車大丈夫かなぁ。
小早瀬さんの取材終わったら、今日はさっさと帰ろう]
佐島はこのとき、このテーマに実はそれほど興味がなかった。
好意を寄せている女子事務員の森美鈴が持ち掛け実現した取材なので、
彼女にいいところを見せられれば、と。
そう思っているだけ。
でも、それが悟られないよう、真面目な顔で、佐島は明広に聞いた。
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