第雪話 おもちゃは箱を飛び出して

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学校について、4年1組の教室に入ると、やっぱりみんなはそわそわしてた。 いつもよりも笑顔が溢れ、それぞれの仲良しグループでお話ししてた。 話題はもちろん、今夜のことだ。 中には、ベランダにでて空を眺めてるグループもいた。 まだ雪は降ってないから、見てても楽しくないだろうけど、空を見ちゃう気持ちは僕にもよく分かる。 『太陽、おはよう!』 僕が席に着くと、一番仲良しの秋人が後ろから声をかけてきた。 『ああ、秋人、おはよう。今日も半袖短パンなんて、ほんと秋人らしいね。』 秋人は一年を通して半袖短パンを貫いている。根っからのスポーツマンだからだって、本人は言ってる。 季節を感じさせない秋人ファッションは、見ていて気持ちが良い。 女子にもすごいモテる。 秋人とずっと一緒にいる僕もモテるかというと、それが全くモテない。これはいつも不思議に思っていることだ。 女子たちは、秋人と同じくらい僕のことも見ているはずだから、一人くらい僕をかっこいいって言ってくれる人がいてもいいと思っているんだけど、未だにそんな女子と出会ったことがない。 でも、それだからと言って、秋人を悪くなんて思わない。幼稚園からの仲だし、モテることはずっと小さい頃からだったから。 『太陽、今日の調子はどう!?』 秋人は元気一杯に言う。 『ふっふっふ!すっっっごい良いよ!今日は勝てるね、絶対!』 負けじと僕も、秋人を超える元気で言い返す。 『ははっ!だよな!俺もそうさ!あーあ、つまんない授業、早く終わらないかなぁ。ずっと座りっぱなしじゃ体調悪くなっちゃうよ。』 『玉野秋人くん。じゃあ今日は廊下に立っていようか?』 聞き覚えのある怖い声が飛んできた。 秋人は、ぎょっとした顔になって固まっている。 秋人の後ろには、僕たちの担任の先生の、ゆきの先生が怖い笑顔で立っていた。 『ゆ、ゆきの先生...おはようございます。』 秋人は、ひきつった笑顔で言った。
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