頭に花を咲かせる

4/35
前へ
/35ページ
次へ
 駅前に巨大ショッピングセンターができたので、地元の商店街はさびれるいっぽうだ。ショッピングセンターのなかにも大きなブックストアはあるが、明が求める雑誌は置いていなかった。  アーケード街の小さな本屋は、店主もまた宇宙フリークで、その超マイナー雑誌を扱ってくれていた。 『明くん』  商店街を歩いていて、声をかけられたような気がした。  明は立ち止まると、周囲を見まわす。まばらな歩行者のなかには、自分を呼んだとおぼしき人はいない。 『明くん、こっちだよ』  声のした方向には花屋があった。夏休み明けにオープンした店だ。それまでは開店休業中の理髪店だったはずだ。  ショーウインドーのなかのサボテンの鉢植えが、明の目に止まった。ひょろりと細長く、細い棘におおわれ、片手を、「やあ」と上げている形状だった。 『そう、ぼく』  ええっ。明はウインドーに歩み寄り、歩道に膝をついた。 『地球人とは初めて話すんだよ』 「地球人とはって?」  明は言葉につまった。  じゃあ、このサボテンは本当はサボテンじゃなく……。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加