0人が本棚に入れています
本棚に追加
駅前に巨大ショッピングセンターができたので、地元の商店街はさびれるいっぽうだ。ショッピングセンターのなかにも大きなブックストアはあるが、明が求める雑誌は置いていなかった。
アーケード街の小さな本屋は、店主もまた宇宙フリークで、その超マイナー雑誌を扱ってくれていた。
『明くん』
商店街を歩いていて、声をかけられたような気がした。
明は立ち止まると、周囲を見まわす。まばらな歩行者のなかには、自分を呼んだとおぼしき人はいない。
『明くん、こっちだよ』
声のした方向には花屋があった。夏休み明けにオープンした店だ。それまでは開店休業中の理髪店だったはずだ。
ショーウインドーのなかのサボテンの鉢植えが、明の目に止まった。ひょろりと細長く、細い棘におおわれ、片手を、「やあ」と上げている形状だった。
『そう、ぼく』
ええっ。明はウインドーに歩み寄り、歩道に膝をついた。
『地球人とは初めて話すんだよ』
「地球人とはって?」
明は言葉につまった。
じゃあ、このサボテンは本当はサボテンじゃなく……。
最初のコメントを投稿しよう!