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『きみからすれば宇宙人かな。ぼくの故郷は火星なんだ。ちょうど地球のおとなりさんだね』
明は信じられなかった。いや、信じたかった。
背後を振り返るが、誰もサボテンの声に気づいた様子はない。テレパシーを使っているんだろう。そんな能力があるなら、普通のサボテンのはずがなかった。
『テレパシーっていうのか。ぼくは明くんのボキャブラリーを利用して、地球の言葉を話しているんだ』
「ほんとうに火星から来たの?」
明は半信半疑でたずねてみた。
火星は赤い砂と岩石におおわれた天体で、いまのところ生物の存在は確認されていない。
『そう。いつもは砂に埋もれているから、ちょっとわからないんじゃないかな。この前、地球の探査機が走りまわっていたけど、ぼくには気づかなかったみたい』
「でも火星で、どうやって暮らしてるの?」
火星の大気の主成分は二酸化炭素だという。表面のほとんどは乾いた土壌だ。それでも、かつて水があった痕跡はみつかっていて、天体の両極に氷が張っていることも確認されている。
『ぼくらは二酸化炭素とわずかな水で生きている。体が貯水タンクになっていて、少ない水分をためこんで利用できるんだ』
明の思考をよんだのだろう、火星人がそう答えた。
「サボテンみたい」
明は感心した。
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