頭に花を咲かせる

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『ぼくも花屋でサボテンを見たときは、あまりにも似ているから、ぼくらの仲間が、すでに地球に来ていたのかと驚いた。ふつうの植物だったけどね』 「それで花屋にいたんだ。地球にはどうやって来たの? やっぱりUFОとか?」 『それは企業秘密』 「ずいぶん気に入ったみたいね。安くしましょうか」  えっ。明は顔を上げた。  エプロンをした三十歳くらいの花屋の女性が、笑顔を向けている。 「そのサボテン。ぴったり千円でいいわよ」  値札には千三百円とある。  千円は明の全財産だ。サボテンを買えば、大宇宙通信は買えなくなる。それでも火星人をゲットできるんだ。  明はかつて宇宙にまつわる空想話ばかりしていた。それがもとでクラスの仲間とうまくいかなくなったのだ。けれど、これで宇宙人の証拠が手に入る。そう考え、明は鉢植えの購入を決めた。  なけなしの千円を払い、火星人をラッピングしてもらった。サボテンの育て方をあれこれ教えてくれたけど、適当に聞き流して店を出た。  入れ違いに、学生服の少年とすれ違った。 「あっ」明は目を見開いた。  スポーツ刈りの角ばった顔に、太い眉毛の下のぎょろ目。  五木猛夫(いつきたけお)だ。夏休み明けに転校してきて、すぐにクラスの番長になった。明を宇宙バカだと言い、率先して仲間外れにした生徒だ。  
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