頭に花を咲かせる

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 店の看板を見上げると、〈五木フローラ〉とある。  猛夫も明に気づいたようだ。 「おまえっ」  突然、胸倉をつかまれ、ショーウインドーに背中を押しつけられた。相手は頭ひとつぶん大きく、明はつま先立った。 「ひきこもりじゃねえか」  げじげじ眉の下から、にらみつけてくる。  なぜ、猛夫に乱暴されたのか理解できなかった。ぼくがなにをしたんだろう? きっと、明の存在じたいが目障りなのに違いない。 「ここ、五木くんの店?」 「うるせえ。そんなわけないだろ」 「猛夫」  さっきの花屋さんが、店から出てきた。 「うちのお客さんだよ。乱暴したら承知しないから」  猛夫が舌打ちし、明をにらみつける。 「おれんちが花屋だってしゃべったら、そのサボテンをおまえの口に突っ込んでやるからな。ようく覚えておけ」  猛夫が、そう念を押して手を離した。  明はあわてて逃げだした。家に駆け込み、階段を上がり、押入れのコクピットに逃げ込む。操縦席に座り、壁のスクリーンに想像の世界を描き出す。そこには明だけの大宇宙が広がっていた。
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