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十年後
あの後、地球に向かっていた彗星は、大幅に軌道を変えて、地球を逸れていった。
直撃という観測結果は、国連決議によって、暫くは隠蔽されていたのだが、軌道が逸れた後、改めて全国に発信された。
そして、今回の一連の出来事もまた、全世界に発信されることになる。
それが、月の住人の希望でもあったから。
世界中の核は、その場に保管されたままとなり、その後の開発も中止されることになった。
まだまだ子供達への虐待のニュースは後を絶たないが、その数は減少へと進んでいる。
小椋と高見沢は、店じまいをしてから外に出た。
真っ暗な空に、満月が浮かんでいる。
「あそこに月陽がいるのね」
「お前、そのセリフ何百回言った?」
「だ、だって・・・」
小椋は、高見沢の頭にそっと手を置いた。
「まさか、『竹取物語』が、今の時代に『タケとリコ物語』に変わるなんて、な」
「あら、絵本だと『月陽姫』になってたわよ」
「そうか」
小椋は、高見沢の頭に置いた手をその肩に移すと、そっと高見沢を引き寄せた。
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