苦渋の決断

4/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 俯いていた月陽は、ふとその顔を上げる。  目の前には、優しかった小椋と高見沢。  感極まって、その顔をぐしゃぐしゃにしながら、月陽は二人に飛びついた。 「今まで、あり、がとう、、お父さ、ん、、お母、さ、ん」 「うわあん、月陽ぃ・・・」  高見沢もつられて大声で泣いた。  小椋は、月陽の頭にそっと手のひらを乗せて、ゆっくりと撫でた。  月陽の感触を、いつまでもその手に焼き付けるように。  やがて、月陽自らゆっくりと二人から離れると、その瞳に涙を溜めたまま、にっこりと微笑んだ。 「最後に、お父さんとお母さんも、笑顔を見せて」  そう言って、月陽は少し首を傾げてみた。  高見沢は涙が止まらず、その笑顔は引きつってしまう。  小椋も、我慢の限界を超えてしまい、笑顔を向けながらも、その頬を一粒の雫が伝う。  五、六歩こちらを向いたまま後ずさった月陽が、勢いよく踵を返すと、右腕を瞳に当てながら、カレナの元に走っていった。  月陽の手を取り、カレナは光の筒の中に入ると、皆に語りかけた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!