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女が少し体を捻ると、その布の中が少し見えた。
どうやら赤ん坊のようだ。
小椋は二人を一瞥し、夫婦だったのかと思い、すぐに視線を外した。
羨ましい訳ではない。だが、自分では、高見沢に子供を抱かせてやることが出来ないという後ろめたさは、日ごろから感じていた。
男の方が、小椋の元へと歩み寄ってくる。小椋は身構えた。
「なんでしょうか」
小椋が声を掛けると、男から予想外の言葉が飛び出した。
「この娘を、預かって頂けないでしょうか」
男はそう言うと、女の抱えている赤ん坊を指差した。
「は?」
小椋は、突然の提案に驚き、二歩程下がってしまった。
たった今、子供を授かれないと思った自分の心を読まれたのかと思ってしまったからだ。
「実は、あなた方の事は、少し調べさせて頂きました」
そう言われて、小椋の表情は強張った。
真白な上下で固めた怪しげな男女が、いきなり赤ん坊を預けると言うのだ。
訝しがらない方がおかしい。
「お二人は、所謂GL、つまりお子さんはいらっしゃらない」
言われるまでもない、と、小椋は少し怒りを感じた。
しかし、視線の先、赤ん坊を覗き込んでいる高見沢は、心なしかその瞳を輝かせている様にも見える。
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