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しかし、高見沢の、赤ん坊を見つめる愛おし気な表情に、背中を押されてしまった。
経営難だし、この金額は有難い、などと自分に言い訳してみたが、実際は小椋もその赤ん坊の微笑に魅了されていたのだ。
「分かりました。こちらからもお願い致します。是非、預からせて下さい」
そう言って、今度は小椋から頭を下げた。
つられて高見沢も頭を下げる。
「お二人ならそう言って下さると思っておりました」
「あの、ところであなた達は一体・・・」
小椋が頭を上げながら言うと、声だけを残して二人の姿が消えていた。
いや、一瞬目を離したすきに出ていっただけかもしれないが。
店内に二人きりになって、初めて小椋は高見沢の傍らに寄り添って、その娘を覗き込んだ。
「不思議な魅力を持った娘だね」
「うん。こんなに可愛い赤ちゃんは初めて見た気がする」
二人は、言葉では言い表せない位の幸福感に包まれながら、いつまでもその娘を眺めていた。
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