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怪現象
僕は金縛に襲われた。僕の側で、人がいるのだ。声をかけようと思ったが、声が出てこない。体を動かそうと思ったが、体を動かさない。意識があるのだが、何もできない僕にその人は不気味な顔でこっちを睨んでいる。「あっち行け!」と言いたいのを喉元で止められている僕は、それでもそう頭の中で追い返そうとした。
そのうちに目が覚めた。僕は体を起こして暗い山小屋の中を見回したが、誰もいない。ただの暗い部屋でしかない。冷や汗をかいた僕は、また床についた。しばらく寝つけなかったが、とにかく目を閉じて再び眠りについた。
次の日の朝、目が覚めた僕は、昨日の風呂の残り湯で顔を洗った。トイレ・朝食を済ませたら、飲み水の確保をした。昨日の残り湯で皿洗いや洗濯・部屋の中を雑巾がけしたら、また五右衛門風呂の中を新しい雪水で満たした。
掃除が済んだら薪割りを日暮れまでした。これで生活の糧を確保したら風呂焚きを始めた。一汗掻いた体を五右衛門風呂の中で癒し、晩ごはんも済ませたら床についた。
やはりその晩も金縛に襲われた。今度はその亡霊に「いらっしゃいませ!」と皮肉たっぷりに頭の中で叫んだ。相変わらず怖い顔を向けている亡霊が去ると、僕は目が覚めるのだ。今度も二度寝して次の日の朝を迎えると、朝食を済ませてから狩りに行くのだ。
なかなか思った通りに獲物が捕まらない。それだけに、何か仕留めると喜びもひとしおである。ネズミを仕留めたネコのように捕まえた獲物を肉として調理した。僕は、冷えた体を五右衛門風呂で癒して晩ごはんも済ませると床についた。
3度目の亡霊に慣れた僕は、静かに追い返した後二度寝をして次の日を迎えた。また薪割りや岩魚獲りと一日を過ごして飯と風呂を済ませて亡霊を迎えるのだ。
亡霊に慣れた僕は、不規則な生活の結果だろうとタカをくくっていて、その後の事を知る由はなかったのである。
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