証拠写真

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証拠写真

床の中で寝ていた僕は、トイレしたくて目を覚ました。用を済ませて床へ戻ろうとすると、戸がガタガタ鳴っている。 「来たな!」と思った僕は、携帯電話を掴んでカメラモードにすると戸を開けてみた。 今度は違う男が立っている。僕は、携帯電話で男を撮影した。男は、黙って後ろを振り向いた。そしてそのまま雪原に消えた。 僕は床へ戻り、写真に切り替えて画像を見た。暗闇の中ちゃんと顔が写ってる。僕には面識がない男は、虚ろな目をしている。血の気がない顔は、誰が見ても不愉快である。 「こんな生気がない者が、なんでわざわざこんな時間に来るのだろう?」と不思議に思いながらも、床の中へ入って二度寝した。 次の日、証拠写真を撮っておいた僕は、男がいた所へ出てみた。しかし、そこには足跡がない。「誰かが、イタズラで僕の目の前に男の映像を映し出したか」と思った僕は、そこら辺を見渡した。しかし、そこにも足跡が見つからない。なんだかわけがわからないまま、身支度や生活の糧の確保と一日を終えると、五右衛門風呂で体を休め、雉鍋を食べると床についた。また男が出るのを待ち構えたが、その晩は出なかった。 出る日と出ない日を当てるには、まだまだ情報が足りないので気長に待ち構えるしかない。とりあえず、僕に攻撃することがないのはわかったので、証拠写真だけは撮るようにした。 そして、数日後に現れた男を撮影した。男が去った後、画像を見たが、前の男とは別人である。なんで違う男が次々と足跡を残さずに現れるのか、その理由を知りたくなった。 イタズラする者もいないなら、これは何だろうと思う。しかし、どう考えても説明がつかない。 僕は、それがわかるまでこの小屋にいて、証拠写真をしっかりと残そうと決心した。
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