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雪崩
一日のお勤めを終えて、携帯電話の画像を開いてみた。6人撮った僕は、その顔をよく見てみた。どの男も同じ人はいない。若くもなく年寄り過ぎもない男たちは、50代に見える。年齢的に、子育てを終えて第二の人生を送り始めているようだ。「何でまたこんな所へ違う男が次々と現れるのだろう?」と思った僕は、五右衛門風呂に浸かり、猪鍋を食べてから床についた。その晩は、吹雪が吹いていた。暖かい床に入っている僕は、とにかく寝てその晩を過ごした。
男が出なかった昨晩の吹雪で、外は雪が積もっている。僕は、除雪をしてから掃除、洗濯、水・食料の確保と一日を過ごした。男も現れない3日間は昼夜問わず雪が降って、山小屋の周囲の除雪に追われた。
雪日が終わって、晴れの日が来た。今までよりも暖かい日なので、雪が溶けてくる。僕は、雪を少しずつ退かしてそれが溶けるようにしている。それから数日間は暖かな日が続いて、雪解けが進むのだ。
そうしたある日の夕方、携帯電話にニュースが流れてきた。それは、僕がいる山小屋がある近くの山で雪崩が起きたというのだ。自衛隊が救助活動に向かってるという所でその報道が別の記事に変わった。「何事も無ければいいのにな」と思った僕は、風呂と飯を済ませて床についた。
その晩に戸をガタガタ鳴らす男が現れた。ドス黒い顔をした男がドアの外で立っているのを撮影したら、また雪原に消えるのを見届けて二度寝した。
次の日、その画像を見た僕は、はっとした。前に来た男と同じ顔をしてるからだ。血の気がないのと、ドス黒くなったのとの差があるものの、目・鼻・口の形は同じだ。「この男は何者だろう?」そう不思議に思っていた所に、雪崩に巻き込まれた登山客パーティーを捜索中との報道が携帯電話に入った。まだ見つかってないパーティーを探そうと雪崩の起きた現場で自衛隊が雪を少しずつ退かしているという。
「そのうちに見つかるかな?」と思った僕は、明るいうちにお勤めをした。飯と風呂を済ませて床についた僕は、また別のドス黒い顔をした男の写真を撮るハメになるのである。
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