君に贈る

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街を美しく染めるイルミネーション。 カップルや親子の幸せそうな笑い声。 みんなそれぞれ、多種多様な幸せを手にしている。 それは僕も同じ。 「本当に寒い、何とかしてよ?」 「ツリーを見たいって言ったのは美香だろ」 「そうだけど」 何か腑に落ちないといった顔で歩く彼女を見る。 「ほら着いたよ、ツリー」 「綺麗だね。ありがとう」 「どういたしまして」 目を輝かせる美香の顔がツリーの飾りに反射する。 「ねぇ美香。今幸せか?」 美香は一瞬目を丸くしたがそっと笑って頷いた。 「あたりまえ」 「そっか。俺も幸せ。」 いつのまにか僕を見守るかのように降り始めた雪。 僕は彼女に積もった雪を手で払い彼女へ贈る。 なぁ美香。今まで数えきれないときを共にしたね。桜を見上げ笑う君も僕の誕生日に泣いてくれたことも大切な僕の宝物です。僕の日常にはいつしか君がいて。眠りにつく前はいつも君を想うよ。言葉じゃ届かないけどかけがえのない日々をありがとう。 「じゃあまた来るね。」 そう彼女に伝え僕はまた来た道を戻る。 いつか君とみたツリー。ツリーの飾りに反射して見えるのは一人。しばらくその場に立ち尽くしていると 「ねぇ見て。綺麗なツリーだね。」 「本当だな」 楽しそうに笑顔で話す若いカップルが後ろから歩いてきた。そんな二人の背中が昔の僕らに重なった。 家に着いた時には雪のせいなのかそれとも涙のせいなのか、顔は濡れていた。 美香と出会った頃の写真は二人笑顔で写っている。 その写真と写真立ての間に小さな紙を見つけた。 「これ何だろう」 「いつも前をみて進む君が好き」 そう美香の字で書かれていた。 「美香。そうだったよな」 窓の外ではもう雪は止んでいた。 「大丈夫」 ふと君の声がした。
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