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男とも女ともつかない、生きているのか死んでいるのかもわからない死相をたたえた異様な容貌。
福の神の方がちょっとびびるくらい。
ヒロミ、思い切りエリカの喉笛に手をまわして締め付けようとする。
しかし、実体がないので力が入らない。
それでもあきらめずに今度は喉笛に噛みつき、噛み破ろうとする。
こちらも実際に力は入らないが、それでもそのヒロミの形相のすさまじさを至近距離で接してエリカは恐怖に縮み上がる。
「何するんだ」
ヒロミに組みついて引きはがそうとするが、これまた力が入らない。
しばらくどたばた半ば透けた体?をだぶらせながらドタバタ混じりあう三人。
それを傍らから福の神が相変わらずにやにや笑いながら眺めている。
ヒロミは力が入らないことに気づいて、今度は一気に脱力したようにへなへなとうなだれながら、体全体は逆に上に浮いていく。
「何をするんだ」
サトルが繰り返した。
「その女が―」
ヒロミがぼそっとつぶやく。
「その女が、俺たちを殺したんだ」
え、となるサトル、そしてエリカ。
相変わらず笑みをたたえた表情を変えない福の神。
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