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峠の地蔵におじいさんが傘を被せてから1刻ほど過ぎた頃、おじいさんの住む村の隣村の、業突張りで渋ちんの庄屋が通りかかった。
雪の夜の下、傘を被った地蔵を見て庄屋が声を上げる。
「何だ、何だ、地蔵が傘を被っているわ。
傘は新品ではないか、勿体無い事をする。
被せたのはうちの村の者では無いだろうな?
全く勿体無い。
オイ! お前達!
地蔵の傘を取り上げろ」
庄屋は供の者達に命じた。
「で、でも、庄屋様。
そんな事をしたら罰が当たります」
下人頭が庄屋に聞き返す。
「罰? お前たち、村の寺の坊主を思い出してみろ。
何かある度に喜捨しろ、喜捨しろとほざく業突張りの坊主を。
あんな業突張りの坊主や寺に、何のありがたみもあるものか。
それと同じだ、ただ単に、仏の姿に似せて彫られた像にすぎない。
そんな物にありがたみなんて無いわ!
だから罰も当たらん。
分かったらサッサと取り上げろ。
あ、そこの手拭いも引っ剥がせ、小汚い手拭いでも足拭きくらいにはなるだろうからな」
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