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「仲間を返せ!」
おかっぱ頭の童が叫ぶ。
「嫌! でも…………、そうだ! 可哀想だからこうしましょう。
旅館を出発して村から出る前に私達に追い付く事が出来たら、狐君を返してあげるわ。
それに心配しなくても、私達がこの子を可愛がるのに(モフモフするのに)飽きたら、ちゃんと村に帰らせてあげる」
そう言い放ち、車を強引に発車させる。
強引に発車した振動で狐君が目を覚ました。
「ウウウウ!」
猿轡越しに何かを叫ぶ。
狐君の隣に座って、耳や尻尾をモフモフしていた妹が猿轡を外し問う。
「なんて言ったの? もう一度言ってごらん」
「助けて」
「嫌」
「こんなの誘拐じゃないか! 僕の人権を無視するなんて許されない事だぞ」
「人権?
あなた妖怪でしょ? 妖怪に人権なんてある訳無いじゃない。
あるとしたら妖権ね」
妹の言葉に重ねるように私も狐君に声をかける。
「心配しなくても、飽きたら帰らせてあげるわ。
ま、何時になるか分からないけど」
バックミラーを覗くと、おかっぱ頭の童を先頭に子鬼やモフモフ君たちが、必死の形相で後を追って来るのが見えた。
私は彼らをおちょくるため車のスピードを落とし、彼らが追い付く寸前、またスピードを上げる。
雪降る夜空の下、車と妖怪の追いかけっこは隣町との境まで続くのであった。
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