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十九時を過ぎた頃、恵美子は一時間と四十五分前には帰って来ているはずだった夫を待っていた。
恵美子は賢い女である。そして了二は恵美子が認めた男である。故に恵美子は了二の帰りが遅い事についても特になんとも思っていなかった。勿論、何かしらの事故や事件に巻き込まれていないかは心配だったが了二の安全は既にメールで確かめてある。
どうやら了二は想定外の仕事量に苦戦しているようだ。全くありがたい話である。了二がこうして働いているからこそ、恵美子は日々を過ごせているのだ。
恵美子は去年まで地方の中小企業で働いていた。大学へ通うために借りていたお金を返すため、ある程度のお金が必要だったのだ。
―――懐かしい話である。
早く帰宅した方が晩御飯を用意し、掃除や洗濯等は手分けして行っていた。こう聞くと共に同じ程度の負担だったように聞こえるがそれは違う。恵美子と違って了二は男である。恵美子は幼い頃から掃除や洗濯等の家事を母親から学んでいた。更に人類が巨大な象を狩っていた頃から男が外に出て働き女は家事等をして生きてきた。当然例外もあるが殆どがそうして支え合ってきたのだ。男は家事に向いていないだろう。故に、恵美子より了二の方が負担は大きいはずなのだ。
「さて、張り切って作るぞぅ!」
そう言って恵美子はテレビのチャンネルを変え、キッチンへと足を運んだ。
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