第1章 出会い

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「よろしく!!俺、ドラムの萩侑斗!」 握ったままの手をぶんぶん振りながら人懐っこい笑みで挨拶をされる。細身からは想像がつかないパワフルなドラマー という第一印象を大型犬に書き換えようかと思った、尻尾が見えそう。身長は俺と同じくらいっぽい。 「ベースボーカルの菅谷蓮です、大輔は歌下手だし、俺も俺でベースに専念したいと思ってたから嬉しい」 大方の作詞作曲は彼が手がけているらしい。中でも、ハイポジションで踊るようなフレージングのベースラインにも関わらず中低音域にヌケがないように仕上げられた曲たちは、俺が心底感動したところの一つでもあった。 「丁度バッキングが出来るボーカルが欲しかったんだよな。お前、適任かもよ」 「ギタボも出来るんだ。ああ、そういえばジャズ研だっけか!大輔うるさいでしょー 高校の時からジャズになると途端にドヤ顔でギター弾くんだよ」 「そう言えば、おれ最初はめっちゃ態度でかいからこいつの事先輩だと思ってた!」 「いや柏木も新入生には見えなかったけどな、その派手髪にあのなまりの強さはヤバかった」 「せからしか!地元ではこれが普通なんばい!」 大学に入ってから早2年、久々に喋った方弁に違和感を感じてちょっと寂しくなった。たまには向こうの友達とも喋らないとな、とは思いつつ、首都圏で丸出しだと舐められやすく痛い目を見るのも経験済みだった。なんという世の中なのだろうか。 「そうだ、萩と菅谷はこっちの方に住んでんの?」 さっきの萩の話からすると3人とも同じ高校なのかも、と思ったらちょっと馴染めるか不安になってきた。 「大輔と萩は埼玉、同じ高校で軽音部だったらしいよ。俺は実家は神奈川。都内のライブハウスでたまたま会って入った感じ。」 「なるほどなー。ていうかやっぱり俺こんな急に入っちゃってもいいの?今日初めてライブ見に来たような奴が。」 念押し、とばかりに聞いてみたら、何故か菅谷はチラッと大輔を見たあとに言った。 「うん、まあ大輔の知り合いなら悪い奴じゃないと思うし、それに曲も作れるんでしょ?それだけでもいい人材だなって。」 「お、おう…そっかぁ」 なんか初対面なのに過大評価…。俺の歌がこのバンドに合うかどうかは自信ないなあ。 「あ、そうだ。デモ送るからLINE教えて。次の練習用に3~4曲くらい歌詞とコードも!」 「おっけー」
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