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ランドセルに木の枝が入っていた。 何の木かはわからない。長さは10cmくらいで、先が二股に分かれいる。にぎるとヒンヤリと冷たい。これは命の残り香だ。いや、枝は折れたからといって死ぬわけではない。これはまだ生きている。少し強く握ると暖かく、微かに生命を感じた。ただ、それは手のひらの温もりである事はわかっていた。 デコボコとした表面はかさぶたが固まったようでもあり、恐竜の皮膚のようでもあった。恐竜を思わせるさわり心地を気に入り、僕はそれを勉強机に飾る事にした。 勉強机にはいくつもの先客がいる。 母の旅行土産のクッキーが入っていた空き缶と、そこに入れた鉛筆たち。消しゴムも入れたが取り出し辛くて、缶の底で黒くなっている。 迷路ばかり描かれた自由帳。細かくページいっぱいに描かれているが、手のひらで擦ってしまい、黒ずみ、ゴールへの道は塞がれている。 学校で使う教科書とノート。忘れ物が止まず、全てをランドセルに入れるようになってから、それらは勉強机から姿を消した。ブックエンドだけが寂しそうに倒れている。     
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