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「よし。では次に第3の事件について報告を聞こう。まだ死体は上がってはいないが、人の皮は発見された。そこから付着しているDNAで誰の皮膚か分かるはずだ」
本多一課長が言うと、隣にいた猿渡管理官がマイク越しで喋った。
「科警研から報告はあがってきてないか?」
管理官がそう尋ねると、近くにいた刑事が「はい」と手を上げ、起立した。
「科警研の報告によりますと、被害者の皮膚の色合いから20代前半男性という結果がでました」
「また20代の男か……」
本多一課長が苦い顔を浮かべながら、小さく漏らした。
だが、まだ報告は終わっていなかった。
「それとDNAと警察のデータベースとが一致し、被害者の名前などが判明しました」
「警察のデータベース?まさか……被害者は逮捕者か?」
池元係長が質問すると刑事は即答した。
「はい。被害者の名前は里村快人。年齢は24歳。川森商事に勤務している会社員です」
「大手じゃないか。どうして逮捕された?」
「その日居合わせた制服警官の報告書によりますと、暴行容疑で私人逮捕と明記されています」
私人逮捕とは一般人による逮捕のことで、里村さんはコンビニの店員に絡んで暴行を加えた末、その店員に逮捕された。
「里村さんは事件当夜、酔っ払っておりまして、容疑を全面的に認めております。その後、被害者とは示談で済ませ、事件のあった4日後に釈放されました。以上です」
報告が終わり刑事は座った。
私はその刑事の後ろ姿を見続けていたが彼が座った瞬間、異様な光景を目にした。
それは最後に入ってきた男がドアの前で呆然と立ち尽くしていたのだ。
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