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「あ、あの私は……」
私はすぐに池元係長の前に出た。
「お前はこいつの指示に従ってほしい」
池元係長は私の後ろにいるであろう人間を指すように、首をくいっと動かした。
私はすぐに後ろを振り向くと、そこにはドアに立っていたあの男がいた。
男は口についた砂糖をナプキンで拭きながら、私の方へと歩いてきた。
そして私の目の前に立つと、係長が男を紹介した。
「こいつは我々の班の1人で警部補の影原だ。影原俊幸」
改めて近くで見ると、影原警部補の姿に何故だか鳥肌がたった。
一見、姿に異変などはない。
着ているスーツもきちんと整えており、年齢は係長と同じにみえた。
だけど、警部補の眼だけは違っていた。
鳥肌の正体は恐らく、この眼だと思った。
あのキツネ目がギラりと光って、私を見つめていたのだ。
それでも私は勇気を振り絞って影原警部補に深くお辞儀をしながら挨拶した。
「は、初めまして、霧咲です。よろしくお願いします」
お時期をしている間、周囲はとても静かだった。
周りの刑事達のざわめきが聞こえてるにも関わらずだ。
影原警部補は少しの間だけ、黙っていたが「頭を上げろ」と静かに命じた。
私は命じられたままに頭を上げた。
警部補は腕を伸ばし、ニコリと笑った。
「影原だ。よろしく」
彼の笑顔に私の緊張は解かれ、すぐに影原警部補と握手を交わした。
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
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