第2話 捜査一課で最も自由な男

6/24
前へ
/243ページ
次へ
現場となった多摩川へと到着した。 東京と神奈川を繋ぐ多摩川大橋の脇に車を停め、私と影原警部補は河川敷へと下りて行った。 「皮が発見されたのは?」 影原警部補が私に聞いてくると、私は慌ててタブレットを開いた。 「えーっと………多摩川専用橋の下です」 私はタブレットを操作しながら、アーチのついた橋に指を指した。 影原警部補はそこへ向かおうとすぐに歩き出し、私は急いでその後を追った。 橋の下には誰もいなく、めぼしいものは何もなかった。 思った通りの結果となり、私はついこの言葉を口にした。 「何もありませんね」 私はすぐに後悔した。 こんなのは怠慢の何ものでもない。 新しい発見を何としてでも探し出すのが刑事なのに…… 私はすぐに警部補に謝ろうとした。 ところが肝心の警部補は私の事を無視して、川辺の方へと向かっていた。 私はすぐにその後を追うように走り出した。 警部補の隣まで行くと、警部補は目の前にある古びたボートを見つめていた。 私も一緒にそのボートを見た。 木材のボートでモーターがついてなく、しかも船底には穴が空いていたのか半分、沈みかけていた。 影原警部補は口に手を当てる仕草をしながら考え始めた。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

822人が本棚に入れています
本棚に追加