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現場となった多摩川へと到着した。
東京と神奈川を繋ぐ多摩川大橋の脇に車を停め、私と影原警部補は河川敷へと下りて行った。
「皮が発見されたのは?」
影原警部補が私に聞いてくると、私は慌ててタブレットを開いた。
「えーっと………多摩川専用橋の下です」
私はタブレットを操作しながら、アーチのついた橋に指を指した。
影原警部補はそこへ向かおうとすぐに歩き出し、私は急いでその後を追った。
橋の下には誰もいなく、めぼしいものは何もなかった。
思った通りの結果となり、私はついこの言葉を口にした。
「何もありませんね」
私はすぐに後悔した。
こんなのは怠慢の何ものでもない。
新しい発見を何としてでも探し出すのが刑事なのに……
私はすぐに警部補に謝ろうとした。
ところが肝心の警部補は私の事を無視して、川辺の方へと向かっていた。
私はすぐにその後を追うように走り出した。
警部補の隣まで行くと、警部補は目の前にある古びたボートを見つめていた。
私も一緒にそのボートを見た。
木材のボートでモーターがついてなく、しかも船底には穴が空いていたのか半分、沈みかけていた。
影原警部補は口に手を当てる仕草をしながら考え始めた。
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