第2話 捜査一課で最も自由な男

7/24
前へ
/243ページ
次へ
「このボートが何か?」 私は終始、ボートを見つめている影原警部補に聞いてみた。 すると逆に尋ねられた。 「お前はこれを見てどう思う?」 私は少しだけ驚くも、とりあえずボートを見た時の第一印象を答えた。 「沈みかけの古びたボートですね。事件とは関係なさそう」 「それだけか?」 「はい」 私は首を縦に頷いた。 すると彼は渋い顔をして、ボートから離れた。 私は再び、警部補の後を追った。 「だって、本当の事でしょ。犯人はここに皮を捨てただけなんだから」 私はそう告げた瞬間、影原警部補はピタリと立ち止まった。 そして後ろを振り返り、鋭いキツネ目を光らせながら私に聞いてきた。 「本当にそう思うか?」 「えっ?」 「“犯人はここに皮を捨てた”……本当にそれが真実だと思うのか?」 警部補の鋭い眼光に私は息を飲んだ。 今まで甘いお菓子を食べる童の様な目は消えていた。 まるで蛇に睨まれた蛙だった。 だけど、ここで立ち尽くしてはいけない。 とりあえず、この事件まではこの人とコンビを組むのだから……… 私は勇気を振り絞って聞いてみた。 「け、警部補はどういうお考えなのですか?」
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

822人が本棚に入れています
本棚に追加