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2日前、私は池元一課長に呼ばれた。
執務ディスクの前に立つと、一課長はおもむろに今後の人事について話してきた。
「私はこの一ヶ月で退任だ。だが、その前に後任を選ばなければならない」
「はい」
私は驚くことなく、落ち着いて返事をした。
一課長が退任されるのは前々から知っていたからだ。
しかし後任は誰にするかは決まっていないと囁かれていたので一課の捜査官全員が注目した。
私は5年間、一課長の懐刀として捜査一課を支え続けた。
後任の件も真っ先に私に知らせるのはその為だろうと思った。
「人事課には話をしておいた。上手くいけば何事も無く辞令が申し渡されるだろう。あとは……君次第だ」
後任の件を話していたが、いつの間にか私が後任だという事に気がついた。
「わ、私ですかっ!?」
私は驚きを隠せなかった。
「君以外、後任が思いつかなかった。君はこの5年間、私の元で右腕として働いてくれた。君の手腕は上層部も分かってくれるだろうから「女だから」とかいうくだらない理由で一課長にはしないだろう」
「本当に……私で、宜しいのですか?だって私の他にも」
「くどいぞっ!だが、君にも考える権利がある。よく考えて返事を聞かせてくれ」
「はい」
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