第2話 捜査一課で最も自由な男

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影原警部補はタブレットから私の方へと顔を向けた。 「いや皆、3人目の被害者が出たのに今更、第1の事件の皮の場所を調べるのはどうかなぁと……」 出過ぎたことを言ってしまったと思った。 だけど、私は他の刑事達が最早、目もくれない場所に捜査をする影原警部補のやり口に疑問を感じていた。 一瞬の沈黙がこの場をさらったが、すぐに警部補の口が開いた。 それは驚くべき発言だった。 「この事件は無差別殺人と言ってるが、俺はどうしてもそうは思えない」 「えっ?」 私は驚くも、最後まで警部補の話を聞いた。 「まず20代男性が狙われてるが、どうして犯人は被害者が20代だと分かるんだ?」 「いや、それはやはり、顔立ちを見たり、大学に行ったりして、品定めしていたのでは?」 「大学はないな。被害者は全員、仕事をしている。その中の1人は会社員だ。就職している」 影原警部補は大学の線を否定すると、次に顔立ちの線も否定した。 「顔立ちを見て犯行を行ったは論外だ。この手の犯人は独特の芸術的美学を持ってる。“20代の男の皮を剥ぐ”これが犯人の美学だ。もし30代の男性だと知らずに誤って犯行に及んだら、そこで犯行は終わる。犯人がまだ犯行を続けたいのであればそんな無謀な賭けはしないだろう」 影原警部補の推論に些か、的を得ていた気がした。 更に警部補は話を続けた。 「犯人は恐らく無差別に見せかけて、狙って犯行に及んでいる。それを覆すにはまず第1の事件を徹底的に調べなくてはいけないんだ」
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