第1話 池元班

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今にして思えば、異例中の人事だった。 私は高校を卒業した後、警察学校に入校。 警察のいろはをここで徹底的に叩き込まれた後に、晴れて警察官となった。 配属先は新宿東署の地域課で交番勤務。 所謂、婦人警官だ。 地域の人達のお役に立ちたい…… それが私のモットーであり、警官を志した理由でもあった。 ところが配属されて3年が経過した頃、思わぬ人事が私の所へやって来た。 4月から警視庁刑事部捜査一課に異動となったのだ。 捜査一課すなわち、私に刑事になれというのだ。 私はこの人事に戸惑いを隠せなかった。 ここ3年、いや警察官になってから、大きな功績なんかあげてはおらず、強いて言うなら、酔っ払いや薬物所持者を検挙した位だ。 そんな私がいきなり刑事だなんて…… 池袋署の人達は「お茶くみとして呼ばれたんじゃないの?」と揶揄されたが実際、そうであってほしかった。 いきなり、大きな舞台に立たされても何の役にも立てない。 それでも私は行くしかなかった。 とにかく精一杯、自分ができる限りの事をしよう。 その決意だけを大きく持って、私は警視庁へと向かった。
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