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「しかしどうして影原警視正はそんな暴挙に出たんだ?」
人事課長は腑に落ちない点があり、私はすぐに彼の質問に答えた。
「簡単ですよ。当時の彼は行き詰まってた。警部補の推測に必要な物がなかったし、彼はその翌日から自宅謹慎で自由に動くことができなかった。だから、恐怖で真実を言わせる方法を取ったんです」
「だがそんな方法は無論、違反だし、認められない。だから、証言としては無力に等しい。それを知らない警視正では無いはずだ」
「そうですね。確かに板原の証言は法廷では使えません。でも警部補はその証言から事件の突破口を見つけようとしたんです」
「なるほど……」
人事課長が納得したように頷く中、更に私は付け加える様に言った。
「それに、あの人は嫌いなんですよ。不良と……ヤクザが……」
影原警部補の過去は何れ話す事になるが、今はその事だけを伝えた。
それに人事課長は別の話を聞きたがっていた。
「因みにこの話を知ってるのは?」
「当時の私はまだ若く、正義感に燃えてました。だから、警部補の暴挙をどうしても許す事ができませんでした」
「本多一課長に報告したのだな?」
「ええ、それから池元係長にも」
「うん。賢明な判断だな。それで彼らの反応は?」
人事課長の目はいつの間にか輝いていた。
早く、2人の反応を聞きたがっている様子だった。
私はその答えに応じようと、2人の上司に報告した所から話を始めた。
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