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もしかすると、いつかまた、私を迎えに来てくれるかもしれないから。
お家のために、両親を安心させるために先に進みます。
だからねーーーー。
「ずっとずっと、心は傍にいるからね。大好きだよ、彩人」
もう重なることの無い彩人の唇へ、私の唇をしっかりと重ね、その部屋を出た。
外に立つ黒服へ、今日で最後だと伝え、丁寧にお礼を告げる。
三年間、通い続けたガラス張りの通路を抜け、唯一の出入口を出る。
一度使ったIDはもう使えない。
本当は返さなければいけないけれど……。
カードケースにIDをしまい、大きな建物を出た。
夜空から振り落ちる雪は、止む気配が無い。
しんしんと、静かに、温まりかけた心を冷やしていく。
「よく頑張ったよ、美咲。新しい生活も、きっと楽しいよ」
口から出た言葉に、私はまた、雪に負けない雫を、積もる雪の上に落とした。
それでも雪は止む気配も無く、大空からゆっくりと、ずっと降り続ける。
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