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しばらく歩いて辿り着いたのは、大きな建物の前。
人に反応して開く扉は、両開きで、寒さに耐えて来た私たちを、温かく出迎えてくれるよう。
服の中に忍ばせていたIDカードをかざして、二つ目の扉を通り抜ける。
そこへ来て始めて、友人以外の人間の姿を見た。
私たちのような、普通の装いの人から、白衣をまとった人間まで。
幾人もの人が、笑っていたり泣いていたり、喜怒哀楽をこれでもかと表現しながら、歩いていたり座っていたり。
「じゃあ私はこっちだから、また今度お茶でもしよーね!」
「うん。咲希」
「なぁに?」
「いつもありがとう」
「何をいまさら」
そう言って、咲希は投げキッスなんて見せて、建物の奥へと走って行った。
あちらは治癒棟。
間もなく退院の人達が入院している、和やかな建物。
そこから出てくる人々も、とても幸せそうで、笑顔が絶えない。
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