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『A棟602、面会お願いします』  機会化されたインフォメーション。  面会受付を通らなければ、私が会いに来ている彼の傍には行けない。 『網膜認証を行います、目を近付けてください』  機械的な声が、きらりと私の目を捉え、確認出来たと、一枚のカードを吐き出した。  特別棟を通行するためのID証。  親族でなければ手にすることさえもできないそれだが、彼とすぐに法務局へ手続きしていたから、問題なく私でも手に入るのだ。  たくさんの喜怒哀楽とすれ違い、一番奥にある真っ白な扉の横、小さな箱へ、手にしたばかりのIDをかざす。  機械的な音がして、静かに扉が開くと、その先は全面ガラス張りの、中庭を見渡せる廊下が続く。  よくよく見ないと、ここの仕組みを知っておかないと、どこに何があるのか分からない場所。
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