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「彩人、今日も雪だよ。とっても寒い。早くぎゅって、抱きしめて暖めてよ」
ここのところ、顔を合わせては、そんなことを呟く私。
出来るわけないのにさ。
ベッドで眠る彩人は、とても綺麗な顔をしていて、今にも起きてきそう。
冗談が大好きな彩人だから、実は起きてるんだー、なんて言って、笑ってくれるかもしれない。
「もう三度目の冬だよ、決断しなきゃいけないってさ、お母さんが煩いんだ」
ベッドの脇にある簡易椅子に座ろうとして、彼の傍に顔を近づけるよう、床に腰を下ろす。
あの日あの時まで、私の手の中にいたはずの彼の手は細く、辛うじて行っている呼吸が、私の顔に触れた。
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