変様

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 そう言えば回収した彰の携帯電話にはストラップが付いていなかった。取り外してしまったのだろうか。机の上に置いてある彰の携帯電話を手に取り、確認するとストラップを付けるためのパーツが割れてしまっている。もしかしたら事故現場に落ちているのかもしれない。今度探しに行こうと考えた。そして彰の家族に返さなくてはいけない。彰の亡くなったショックで返し忘れていた。  「加奈ー、ご飯よー」  階段下からお母さんが間延びした声で私を呼ぶ。私は立ち上がり、ドアノブに手を掛ける。もしかしたらこれからも彰との思い出を振り返ることがたくさんあるかもしれない。その思い出せる記憶の一つ一つを大切にし、胸に刻みこもう。  私は自分に誓いを立てるとドアを開け、リビングへと向かった。
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