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加奈は僕らを見て「おはよう」と挨拶をし、数回撫でてからベッドに腰掛けた。そして何やら考えている。むむむと悩みもすれば、不安そうな顔になったりもする。そして最後には覚悟を決めた顔になる。そして彼女は言った。
「私が学校に行ってる間はクロも外で散歩しててね」
その言葉にクロさんはわかっていたとばかりに反応する。
「ほらな、いっただろう」
「ですね」
予想があたって嬉しいのかクロさんは上機嫌だ。しかし加奈に顔を向けることはしない。嬉しいはずなのに素っ気ない対応をするクロさんはもしかして天の邪鬼なのだろうか。
そして階段下から加奈を呼ぶ声が聞こえた。呼びかけに応えて加奈は一階に降りてゆく。
「今からがメシらしいぞ。さっきまではなにをしていたんだ」
「服が変わり、髪も若干濡れてまのでお風呂でも入ってたんじゃないでしょうか」
「毎度思うが人間はよく毎日水浴びをできるものだ」
「習慣ですから」
「わしも水浴びが習慣になれば喜んで浴びるようになるのか」
「それはどうでしょう」
猫の習性はよくわからないし、一般的に猫は水が苦手とされているのでクロさんの純粋な問いには苦笑いしか返せなかった。
加奈が部屋に戻ってきた。
「早いな」
「数分しか経ってませんし、もしかしたら食べてないのかもしれません。加奈はもともと食べる速度は早くありませんから」
加奈は机の方向を見つめていたと思うと僕らに向き直り甘えた声をだした。
「クロー。勉強したくないんだけど今日くらいはいいよね?」
加奈は真面目な子だった。課題を出さなかったことは一度もなかったのではないだろうか。
「今日は仕方ないですよね」
「知らん。猫に聞くな」
クロさんはふいっと明後日の方向に首を向けた。
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