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「紙袋、ぺっちゃんこで中を確認するまでもありませんでしたね」
「わかってはいたことだがな。どうする、事故現場も確認するか」
「可能性は低いでしょうけど確認させて欲しいです」
僕らは森を抜けて事故現場へと向かった。無いとはわかっているものの、そこにあって欲しいという僕の思いは実際に確認するまでなくなりそうにもなかった。
「ところでだ彰。そのプレゼントが見つかったとしたらどうするのだ」
走りながらクロさんが僕に問いかける。確かにこの姿ではプレゼントを見つけたとしてもどうしようもないとは思う。でも、渡すだけだったら出来るはずだ。それをどう受け止めるかは加奈次第になってしまうけれど。
「加奈に届けます」
「そうか」
それ以上クロさんはなにも言わなかった。それがクロさんの優しさなのだろう。僕はその優しさに感謝し、声を押し殺しながら少し、泣いた。
黒猫は闇夜を駆け続ける。
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