キャットウォーク ー 変わりゆく中で

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 神田交差点は所々に街頭があるものの感覚が広く、夜に女の子が歩くには躊躇うような雰囲気だ。僕が轢かれた横断歩道の前には赤信号で停まっている赤いマツダのスポーツカーが一台。青信号になるとエンジンを噴かせて走り去っていった。この道路は片側一車線のそこまで広くない道路だが、他に通る道が裏道しか無いので主要道路となっている。  「夜になると雰囲気違いますね」  「夜に来たのは初めてか」  「高校生だったんで、こんな夜中に出歩いてたら補導されちゃうんですよ」  「人間のルールは面倒だな」  僕的には猫社会も実力主義って感じで怖いですけどね。心の中でツッコみながら道路を眺める。先程のスポーツカーが走り去ってから次の車は来ない。  「これなら安心して探索できます」  「幽霊になってからまた死んだら笑い草だな」  クロさんはハッハッハと愉快そうに笑っている。もしかしたら今まで見た中で一番笑っているかもしれない。だけれどネタにされている僕としてはそんなことで笑われるのは不服だ。  「笑いすぎですよ」  「いや、すまない。滅多にないことだと思うとな。歳をとっても初めてのことには年甲斐もなくワクワクするものだ」  死ぬことにワクワクされても反応に困る。そんな冗談を交わしながら僕らは周辺の探索を開始した。
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