キャットウォーク ー 変わりゆく中で

11/17
前へ
/92ページ
次へ
 歩きながら辺りを見回すがそれらしき物影は見当たらない。落ちていれば目立つものだし、誰かが拾ってしまったのかもしれない。  「そういえば箱とはどのようなものだ。詳しくは聞いていなかったな」  「白くて固いアクセサリーボックスです。周りにはシルクのリボンが巻かれていました。あと紙袋を見てわかると思うんですけど、そこまで大きくなくて両手で包み込めるくらいの大きさです」  両手で包み込むジェスチャーをする。しかし、今の僕は猫だったので「人間の」と説明を補足しておいた。  「落ちていたらすぐに見つかる大きさだな。こちら側には無さそうだし、向こう側へ移動するとしよう」  横断歩道の前に戻ると赤信号だったので、座って青信号に変わるまで待機した。青信号に変わったので反対側へ歩き始める。その間僕はここで死んだんだなと神妙な気持ちとなっていた。  反対側も一通り探索したがアクセサリーボックスは見つからなかった。しかし、途中で見覚えのあるストラップを見つけたので、クロさんにお願いして目立たない場所に移動してもらった。今の僕はあれを身に着けることができない。心の中で「おばあちゃんごめんね」と呟いた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加