キャットウォーク ー 変わりゆく中で

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 廊下の様子でであれば窓から伺えるが、教室の中まで入ってしまうと見えなくなってしまう。ホームルームが終わり、加奈が友達と教室から出てきた。次は移動教室なのだろう。  「わしらも移動するか」  クロさんが腰を持ち上げ移動しようとしたが、どのみち教室の中に入ったら見えなくなってしまうので断り、その場に待機した。正直、授業の間の十分のために一時間も待機しているのは退屈だろうなと僕は思った。そんなことを考えていたら加奈が戻って来た。きっと忘れ物をしたのだろう。小走りで若干急いでいるように見えた。しかし、加奈は教室にたどり着く直前で男と話し始めた。しばらく見ていると男が加奈の腕を掴み、何やら揉めている。  「軟派な印象の男だが、知り合いか」  「いえ……わかりません。あいつは一体……」  僕は二人の状況を気を張って観察する。加奈は掴まれた手を振り払うと踵を返し、走ってきた方向へ戻っていった。腕を振り払った加奈の顔は険しく、あの二人の関係は良くはないのだろうと悟った。  「要注意観察対象だな」  「何事もなければいいんですが……加奈のことも気になりますが、今日はあの男を監視しましょう」  そうして僕らはその男を監視し始めた。男は始業のチャイムが鳴っているにも関わらず、男子トイレに入っていった。十五分ほどするとトイレから出てきて階段を登っていく。その後は廊下に姿が見えなかったので、屋上まで登っていったのだろう。この時点で男が品行方正な生徒ではないことは明白だ。終業のチャイムがなると男は教室の中へと消えていった。
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