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落ち葉にまみれて、寝転ぶ女は頬を赤く染めている。うつ伏せになったまま、素直な寝息をすうすうと、小さな鼻腔からたててまるで赤子みたいな清らかさを、見つけた少年に見せていた。
そばに近づくと、むっとするような酒の臭いがした。酔っぱらいか、と少年はひとりごちる。
ふふっ。
女は含んだような笑いを発して、じゅるりと地面に融けて消えた。
その日、都心では例を見ない酷い雪が降った。下校途中、少年は湿って行く革靴を早く脱ぎたいと思いながら歩いた。
朝に女が融けた落ち葉の山は、雪に埋もれてなくなっていた。
あの女は、つれてきたのだろうか。
少年はふと、そんなことを頭に浮かべて歩みを進めた。
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